常設展は、鎌倉に最もゆかりの深い鎌倉文士の直筆原稿や愛用品が展示されていました。原稿用紙に鉛筆や万年筆であれこれとメモ書きも。時には鎌倉の街をのんびり歩いて、思索されたのでしょうか。
木々に囲まれた緩やかな石坂を上り、トンネルをくぐると現れたのは、和と洋が折衷する素敵な洋館、「鎌倉文学館」。加賀藩主旧前田侯爵家の別荘で、鎌倉にゆかりのある文学者たちの資料が展示されています。木の色、窓枠、柔らかな光を映す円いステンドグラスなど、当時の贅を尽くした調度品がそのまま残る館内は、クラシックな気品が漂い、まるで昭和初期にタイムスリップしたかのようです。鎌倉と結びつきが深い大佛(おさらぎ)次郎氏、川端康成氏など、鎌倉文士と呼ばれる文学者の直筆原稿や、「義経記」を代表する鎌倉の古典文学に触れることができます。
鎌倉に少しでもゆかりのある文学者は、実に300人を超えるのだとか。展覧会の本を手に取って読むことができる談話室があると聞き、しばし読書を愉しむことにしました。作品中ところどころ現れる鎌倉の描写に、「あの場所から眺めた景色かしら……」と想像しながら読み進めると、作品の味わい深さも倍増するようです。ふと本から目をあげると、窓の外には、両脇に山、そして先には海を一望する、鎌倉という土地ならではの絵画のような風景と美しい庭園が広がっていました。庭園では、毎年、春と秋にバラ祭りが行われ、およそ180品種200株のバラが景色に彩りを添えるのだそう。鎌倉の恵まれた自然地形とゆるやかに流れる豊かな時間……。この地には、今も昔も変わらず、文学者たちを惹つける魅力があるのだと感じずにはいられませんでした。
談話室から望む、鎌倉ならではの地形が生み出す風景は、一枚の絵のようなしっとりとした美しさがありました。ここだけ世界が違うような、静寂な時の流れを感じながらの散策にぴったりの場所です。
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